【金城剛士】あえてコトバにするなら【B-project】
第2章 鼓動アンビシャス.1
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翌日。
美味しそうな匂いで目を覚ますと、目の前に輝く王子の顔があった。
「朝イチの王子眩しい…」
「おはよう、漣。あんまりかわいい寝顔だったから、つい見つめてしまったよ。」
口から砂糖が出そうなセリフを聞きながら、ダイニングに腰掛けた。美味しい匂いの正体は、倫毘沙が用意した朝食だった。
「これ、倫毘沙が作ったの?」
「出来合いだけどね。料理って楽しくて好きなんだ。」
「すごいね。なんでもできるんだ。いただきます。」
暖かいスープに、美しい目玉焼き、ふっくらしたトースト、シャキシャキのサラダ。バターはいかにも高級そうな色をしている。珈琲は挽きたての香りが素晴らしい。
「満足してもらえたみたいだね。よかった。ここに住んでもいいんだよ。」
「そうしたいよ。はぁ、今日はオフだから剛士に会わなくて済むけど、明日の撮影は全員参加だよね。今から気が重いよ。」
倫毘沙はニコニコしながら食事している。食べる所作が完璧すぎて、向かいで食べていて恥ずかしくなった。
「でも、そんなことより、今日は竜持が帰ってくるんだよね。はやく会いたいな。」
珈琲を飲みながら、倫毘沙に微笑んだ。
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記憶喪失の竜持が帰ってきた。心が小学生の頃まで戻ってしまっているらしい。僕の記憶も、もちろんないみたい。
「竜持。かわいい。」
「ありがとう、漣ちゃん。」
竜持は僕に懐いてくれて、ずっと膝に座らせている。
後ろから手を回しているので、抱っこしてるようなものだ。
「可愛い2人がじゃれ合っているのは絵になるなぁ。」
倫毘沙が指でフレームを作って僕らをそこにはめた。
竜持は僕を見上げて言った。
「北門さんと漣ちゃんって、結婚してるんだよね?」
「竜持!?僕は男だよ。」
「嘘。だって、ここ、おかあさんと同じ匂いがする。」
僕の胸に鼻をつけて、匂いを嗅いでいたらしい。
顔がかぁっと熱くなる。
「男女が一緒に住むのって、結婚する人同士がすることでしょ?」
倫毘沙、笑ってないで何とか言って。
「そうだね。僕にとって漣は、とっても大切な人だよ。」
そういって後ろから倫毘沙にハグされた。
前には竜持、後ろに倫毘沙で、キタコレサンドだな。
僕はくだらないことを考えて現実逃避を始めた。