第10章 人生も人間もバグだらけ
突破した先、放射状の通路中心にそれはあった。
巨大な円柱のエネルギー制御装置。
これさえ壊してしまえば、ヒノカグツチへのエネルギー供給は絶たれるはず。それが皐月の獲物。
「晋助がいるな。」
反対側のゲートから入ってきたのだろう。装置を挟んだ向こうで敵と交戦しているのが見えた。
大きな爆発があったであろう跡の残るゲートに敵が集中しており、彼女の側は敵の影もない。先に装置を壊してしまおうと、皐月は柱へ続く道を走り抜け柵に足をかけた。
その時だった。
鼓膜を突き破る様な爆発音と、高杉の名を叫ぶ声。
視界の端に見える、爆発で吹っ飛ばされた、
「しんすけ!!」
皐月は柵を全力で蹴り、高杉へ手を伸ばす。
落ちて行く高杉はなにを思ったか、自身と同じく落下していたバズーカを手にすると、その発射の勢いで柱に近づいて刀を突き刺した。
「やめろ!!晋助!!」
この天鳥船の要であるこの制御装置を刀一本で人間が破壊できるわけがない。彼女は高杉を片腕で抱き、彼が刺していた刀の下に差し込む様にして傘を突き立てた。
「はなせ皐月!!」
聞いた事のない声を上げながら自分を抱え、傘だけで柱を壊す彼女に、高杉は全力で声を上げる。
だが彼女の力には敵わなかった。そのうち上層部の方から徐々に爆発が起こり、遂に目の前にまで迫ってきていた。
さすがの皐月も、人を抱えながら片手で衝撃を受け止め続けるのには限界があった。利き腕の骨が砕ける感覚。
このまま二人落ちていってしまえば、彼女は高杉を守るどころか彼まで道連れにしてしまう。ちらっと伺った下はどこまで続いているか分からない。
しかし迷っている暇もなかった。
皐月は傘を柱から抜き、うまく爆発を避けると、高杉を頭上に放り投げた。柱が爆発してむき出しになった骨組みに向かって。
片腕しかいう事が効かなくなってしまった彼女にはそれが精一杯だった。