第10章 人生も人間もバグだらけ
皐月は必死に思考を巡らせた。
このままでは、虚が何だと言っていられない。あの天鳥船は名の知られた古代兵器。もし、あれを打たれでもしてみろ。地球は一瞬にして銀河の塵となる。
彼女にしては珍しく焦っていた。
地球にいる彼が危ない。
「皐月。」
「っ!」
考え事をしていたせいか。
いつの間にか背後に回られていた高杉に皐月は気付けなかった。
「俺たち鬼兵隊はこれから、ステレス艦であの天鳥船に突っ込む。」
口調とはかけ離れた物騒な話。
そして、そんな物騒な話をしているとは思えないほど優しく、高杉は彼女の握られた手を解いて繋いだ。
「お前は、来るなと言っても付いてきそうだな。」
「……当たり前だろ。君達に今死なれては困るのだ。」
「あいつを倒しに行く前に、やらなきゃいけねぇ事がある。」
悪ぃな、という彼に彼女はまた驚いた。
高杉は、皐月が虚を倒すために自分達を揃えたがっていた事に気付いていた。そのために、彼女は再三地球で大人しくしていろ、と言っていたのか。自分が虚を連れてくるまで待っていろ、と。
「…………いつから知っていた。」
「さぁな。まぁ春雨で会った時には、おめぇが烏なのは知ってたな。」
思ってもみない言葉に、彼女は繋がれた手もそのままに振り向く。高杉は満足気に笑っていた。彼は皐月のこの顔が見たかった。
そんな高杉の前。皐月は混乱していた。
じゃあ何だ。今まで知った上で、僕といたっていうのか。
目は口ほどに何とかと言うが、まさにそうだなと思いながら高杉は彼女を見下ろす。
「だが、一個わからねぇのは、それだな。」
繋がれていた手を解き、皐月の胸元を指す。
そこにあるのは、彼女がいつも肌身離さずもっているアルタナの結晶石。