第2章 思い出さなくても良い思い出もある
昨日のことの様に覚えている。
あの人を取り戻そうと、戦争に参加した3人。
突き放し、壊すことしかできなかった僕。
大切な人との約束を守った銀時。
大切な人に誓った約束を守れなかった僕。
遠い日の思い出に想いを馳せることは最近多くなった様に感じたが、まさかこんなところでとは予想外であった。
「………ハル、なんだあのシリコン三太夫は。」
「………坂田銀時と、仲間達です。」
ハルと簡単におち合う約束をし、神威が上から下の階へ降りたのを見送った皐月。そのあと降りてきた阿伏兎と死体に、彼が望んだ穏便な事運びが失敗した事を悟った。子供がいないのを見ると、逃げたか、殺されたか。どちらにしても彼らにはもう、また新しいモノを用意するか、戦争をするかの二択しかない。後者にならない様派遣されたのだから、部屋でじっとしている訳にもいかなくなってしまった。
足早に待ち合わせた場所へ向かうと、そこにはすでにハルの姿があった。
「皐月様……」
「……銀時もきたのか。」
すぐ下に見える遊郭入り口あたりにある人影へ向けて言えば、ハルはゆっくりと首を縦にふった。
何年ぶりになるか。
会えずとも、顔を一目見ることくらい許して欲しい気持ちで、少し身を乗り出し、下を覗き込んだ皐月の言葉である。
「途中、どこか店に寄ったと思えばあの姿で…」
「何をどうしたらごまかせると思ったあのバカは。脳にまでパーマがかかっているのか。」
案の定、見張りのクノイチと揉めている。
それでなくとも流れが悪いというのに。皐月が珍しく頭を抱えている様子を、ハルが隣で心配そうに見つめていた。