第7章 キャッホーな奴には少し早い待ち合わせ時間を教えておけ
高杉は甲板の先頭に立っていた。
そこへ、晴天の空の下。
傘をさした皐月が数歩後ろに立つ。
「出てくるな、っても無駄だな。」
紫煙を吐き出しながら一点を見つめる高杉の目は、確実に何かを捕らえていた。
「忍びの国は初めてきたはずだったんだが、」
どこか懐かしい匂いがする、と呟くと高杉は笑い始めた。
「デートだと、言った筈だ。俺が折るが早いか、てめぇが折るが早いか。」
「………そうだな。だが、折ると言われるのは心外だ。」
ハル、と皐月は声をかける。
そうして、音もなく二人は船から姿を消したのだった。