第7章 キャッホーな奴には少し早い待ち合わせ時間を教えておけ
「折角皐月様がいるというのに。あの総督、なんでまたこんな事。」
船に戻ってきた皐月は、否応なく鬼兵隊の船へ乗せられ、鍵はないといえ部屋から出るなと、閉じ込められていた。
「そうだな。一番楽しみにしていた所をこうもされては反抗もしたくなる。」
「将軍の首取り合戦なんて、名前だけで楽しそうなのに…」
「ハル、そんな事を言っては朧様に怒られるぞ。」
一応幕府と仲良くしているのだから、と言うとハルは珍しく皐月に凄んだ。
「俺がお仕えしているのは、朧様でも、まして天導衆でもありません。俺が行く道、それは貴方が行くところです。」
「頼むから朧様の前でそれを言うなよ。」
窓辺に寄りかかり外の騒がしい音を聞きながら、天井をみあげる。
今回の事、晋助はどこまで読めているのか。
どうやら自身と奈落のことはバレてしまったらしい。
殺そうとしない所、まだ全ては把握していなさそうだが。
恐らく、このデートは自分の動きを見られているだけであろうと思う。こちらとしても、春雨からこの期間、どう離れる理由を付けようか考えていた所だ。
彼ら第七師団派はここで春雨から、鬼兵隊もろとも引き剥がすと言われている。元老院はもうしばらく機能していない。
そしてこれは序章にも過ぎない。
あの人はこんな事、駒をひとつ進めたに過ぎない。
高杉らが、
幕府が、
いくら駒を増やそうとも、
いくら駒を前に進めようとも、
それらが乗った盤をひっくり返そうとも、
その盤自体、あの人にとっては駒となる。
もう既に、彼等とあの人では、戦っている場が違いすぎるのだ。
「あれほど、大人しくしていろと言ったのにな。」
ゆっくりと立ち上がった皐月は部屋の襖に手をかけた。
「行きますか?」
「あぁ、デートに誘われているからな。」