• テキストサイズ

夕顔

第6章 男のタマは時に刀でも切れない








あの八咫烏に、見つからない方があり得なかった。
あの八咫烏が、知らないなんて方があり得なかった。


「……白夜叉を捕らえよ。」

彼女は焦った。
朧は直接彼を殺すつもりなのか。

もういっそ松陽はいい。銀時が死ぬのだけはだめだ。

彼女は戦場を駆けた。
あの烏よりも先に銀時を見つけなければならない。




ふと、視界の端に見えた、血に濡れた銀髪。
皐月は弾丸よりも速くそちらへ飛んでいった。

まさかこんなところで顔を合わせると思っていなかったのだろう。
銀時は目をまんまるに見開いていた。
刀で受け身をとったが、かなりの距離をとばされる。
皐月は、後ろへ倒れこみながらも、番傘を受け止めている銀時の眼前で怒鳴った。

「来るなと言っただろ!はやく帰れ、今ならまだ間に合う!」

「は?!てめぇこの期に及んでまだそんなっ、」

「いいから早く引けと言っているんだ!!」

彼女の食い気味の様子に銀時は戸惑いを隠せなかった。
こんな必死な顔は、昔も見たことがない。




「ーーー霞。」

皐月の背後から、声がした。
それに目の前の彼女の顔から、みるみるうちに血の気がひいていく。 



「時間切れだ。白夜叉をこちらへ連れてこい。」

「…朧様。殺すおつもりですか。」

「それは、そいつ次第だ。」





その日、皐月は魂が折れる、という本当の意味を知った。
侍には確かに、刀では斬れない魂があった。



/ 141ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp