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夕顔

第5章 女は黙って笑顔に花





「ブフォッ!」

普段仏頂面な彼からは想像しても似つかない程可愛らしいそれに、銀時は思い切り吹き出した。

「ちょっ、おま。どうしたんだ??そんなもの取って、泥までつけて遅れて来たのか??家でてお花屋さんでも開くつもりか??」

「うるせぇよ!てめぇは一生アホ面ひっさげて寝とけ!!」

笑った勢いのまま止まらない銀時に、高杉は大きく舌打ちをした。
桂も少し笑っている様に見えたが、その手にある白い花を見直してはっとした。

「……白菫か?それは。」

白い花弁をつけたそれは少し紫がかっているようにも見える。葉の形とその色合いから、桂は昔おばぁに教えてもらった花の名前を思い出した。


「あぁ。似てるだろ?目の色によ。」


高杉は、未だに腹を抱えている銀時から皐月へと顔を戻す。そして手に持っているものを彼女の顔の横、瞳の色と比べる様にして並べた。

「しろ、すみれ。」

皐月は桂から聞こえた名前を呟く。
高杉は彼女の絹糸の様な髪を耳にかけ、そこへそっとその花をさした。

「…やっぱ似合うな。」

満足そうに高杉が笑う。
皐月は花に優しく手を添えた。柔らかい小さな花弁の感触を感じる。


「随分と洒落た贈り物だな。」

花を耳から落とさない様、そっと振り向いた彼女に桂はよく似合っている、と声をかけた。

「当たり前だろ。」

「晋助、ありがとう。」

おー、と返す高杉はもう自身の気持ちの名前を知っているのだろう。顔を明後日の方へ向けながら、いつまでも花を気にして触ろうかどうかと手を迷わせている皐月を見ていた。

そんな様子を見て、銀時がやっと静かになる。


「そういえば昔、おばぁに教わった事がある。花には、象徴的な意味を持たせるための言葉があると。白菫はたしか……"純潔"だったな。」

博識の桂が人差し指を立てながら話す。たしかにこの白く美しい容姿と純潔はとても合っている、と思った。

「あと、違う言葉もあったな。えー、なんだったかな?」

思い出せないな、とばかりに桂は高杉に視線を送る。高杉は声をあげながら歩み寄った。

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