第5章 女は黙って笑顔に花
「まつり?」
「うむ。明日、街の方であるらしい。季節はまだ少し早いが、花火も上がるそうだ。」
少しずつ日が長くなるように感じる頃。桂が唐突に切り出した話はまた随分と突拍子もない事であった。
「小太郎、まつりとはなんだ?」
馴染みのない言葉に皐月は興味を示した。
「祭というのはだな、元来慰霊のために神や仏に供物を捧げまつる行為の事をいうのだが、明日のはそれよりもっと派手なものだ。」
事細かにわかりやすく言ったつもりの桂だったが、それはかえって皐月の頭を混乱させた。
拝殿の階段に腰掛けている二人の背後、罰当たりにもだらしなく寝転がる銀時はその様子を見て口を開く。
「もっと簡単に言ってやれよヅラ。いいか?皐月。祭りっつーのは、男と女が交「ヅラじゃない!桂だ!!」………そこかよ。」
しかもそれは祭りではなく御祭りだ、などと突っ込む桂は確実に何かがずれていた。結局どの様なものか掴めずにいる皐月は、とうとう首を傾げ考え始める。そこへ、高杉が遅れて現れてた。
「てめぇら、皐月に変な事教えんじゃねえよ。」
眉を寄せて二人を睨む。
どこで何をしてきたのか、高杉の頬には土の跡がついていた。
それに気が付いた皐月は、階段を降りて彼の前に立つと、自分の服の袖で拭い始めた。
「晋助、」
「お、おいっ。汚れんだろ。」
真っ白で肌触りの良い感触を感じるも、薄汚れたのが視界に入り思わず彼女の手首を掴む。その頬は擦られたせいか、少し赤く見えた。
「ん?高杉、その手に持っているものはなんだ?」
皐月を掴んだ拍子に、背後に隠していたもう片方の手が顕になり、その手にあるものを桂は目敏く見つける。
握られていたのは、一輪の花だった。