第4章 恋にマニュアル本は必要ない
「大変です!!形勢が……形勢が逆転し始めました!!」
命をかける賭博なんて、と思っていた。
だが考えてみれば、日々似た様な事しているじゃないかと思い直す。今回だってまさにそうだ。
第七師団と鬼兵隊の圧倒的戦闘力に恐れを成した奴らが、次々にこちらへ寝返る。それでも状況を読めず、暴れたいだけの馬鹿どもの相手にまだ追われていた。その間に皐月は、気付けば処刑台近くまできていた。
「派手な祭りを主催したもんだな、皐月。」
返り血を浴びながら、この状況を楽しんでいる顔をした高杉に声をかけられる。かなり暴れたのだろう。その証拠に、少し刃がこぼれはじめていた。
「これを思い出に地球へお帰り、高杉くん。」
「誰が高杉くんだ、やめろ。」
大雑把な技をかます雑魚の相手に飽きてきた時、唐突に背後に気配を感じた。
「えーい!」
その場に似つかない間延びした声と共に飛んできた飛び蹴りを、皐月は片手で掴み止めた。そして、その勢いのまま目の前の野郎の顔面に、鞭の要領で叩きつける。
「……君、どさくさに紛れて僕を殺そうとしているだろ。」
「そんな人聞きの悪い事言わないでよ、皐月さん。」
足首を掴まれたまま倒れた体制の神威が、いつもの笑顔を貼りつけ、首だけで振り返った。
「相変わらず気味の悪い顔だ。」
そう言う彼女は、間違えば殺されていたかもしれないと言うのに普段と変わらない無表情。今まで暴れていたとは思えないほど涼しい顔をしている。