第4章 恋にマニュアル本は必要ない
「そういえば、皐月様はご存知ですか?最近、牢で"呪いの博打"なるものが流行っているらしいですよ。」
部屋をでて、五番船着場へ向かう途中、ハルが少し楽しそうに話を始めた。
「知らないな。そんなものが流行っているのか。」
皐月が知らないと知るや否や、ハルは手を振りながら説明する。
「この前捕らえられた元第四師団団長が、牢の中で丁半をしているらしいのですよ。それを外すと、死んでしまうんだとか。」
「かけるものが命とは、かなり物騒だな。」
さすが孔雀姫だ、と呟く彼女。少し興味を持っているその様子にハルも嬉しそうに続けた。
「皐月様も賭けに行ってみますか?きっと皐月様なら勝てますよ。」
「僕はギャンブルはしない主義だ。」
「皐月様は少し遊ばれてもいいのに。」
彼女の返事に肩を落とすハルを横目で見て、実は彼が行きたいだけなのでは?と思う。
そうこうしている内に目的地へ着いた二人。
普段は戦艦がひしめくそこには今、がらんと広い空間があるだけとなっていた。
「遊んでいるようなものだろ。僕はこの戦場に生き残るものを賭けて、あのアホを嗾けたのだから。」
そして願わくば、と思うが、先程の様子を見るとその望みは薄そうだった。
「さて。ハルよ、管制室に行って船着場を開けてきてくれ。」
「お任せください!」
駆け足で管制室に向かうハルを見ながら、そう簡単にはやられないであろう彼らの顔を思い浮かべる。あの酔狂人、自分お気に入りのメガドライブを隠していたのだ。このくらいの罰は受けてもらわないと。
ハルが仕事をしたようで、鉄が凄まじい音を立てながら開き始める。
来るのは、第七師団と鬼兵隊か。
それとも他師団か。