第4章 恋にマニュアル本は必要ない
「……ハル。」
「はい、皐月様。」
皐月が声をかけると、どこからとも無く、番傘と外套を持った青年が現れる。立ち上がってそれらを受け取ったと思えば、素早く身につけていく。
そうして未だ腰掛けている高杉へ、彼女は顔だけで振り向いた。
「晋助、時間だ。」
それだけを告げて去っていく皐月の背中をみて、高杉は思う。まだ彼女の中には、あの銀髪がいるのか、と。
銀時と同じ目の色を持った青年を連れて歩く皐月は、一体この宇宙のど真ん中で、何をしているというのだ。一体、何と戦っているというのだ。
「相変わらず、掴めねぇ女だな。」
彼女が部屋から出て行ってから暫くした後、高杉も立ち上がって部屋を出て、母船の中心部へと向かう。
今日は、第七師団団長の処刑日だ。