第3章 春休み明けの女子と夏休み前の男子はセットで気をつけろ
この時期の昼寝は最高に気持ちいい。
暑くなく、寒くなく。
風も強いわけでなく、弱いわけでなく。
全てのバランスが整った神社の境内にある木の上、稽古後の座学をサボって銀時は寝ていた。
最近は松陽の周りのあらぬ噂も静かになり、門下生も増えて、銀時一人がサボっても追われなくなっていた。まぁ帰宅すればお仕置きが待っているのだが。
気持ちの良い風に吹かれながらしばらく。
神社の階段を上がってくる足音が聞こえてきた。
もう終わった時間か…。
大体ここに来るのは家によりつかなくなった高杉か猫くらいなものだ。だが足音が二人分である事に気づき、銀時は身体を起こした。
そして案の定、階段を登ってきたのは見知った顔の二人だった。
「やはりここに居たか、銀時。」
桂が木の下で歩みを止め、こちらを見上げる。
その隣を歩いていた高杉はというと、こちらに一瞥をくれて舌打ちをしたかと思えば、そのまま真っ直ぐ拝殿の方へ歩いて行った。
「松陽先生が笑っていたぞ。最近サボらなくなったから嬉しかったのに、とな。」
お前らのせいだ、とは口が裂けても言えず、銀時は松陽からの仕置きを覚悟した。
「だがまさか銀時も知り合いだったとはな。それは知らなんだ。」
「は?何のことだ?」
何って、と桂が銀時から拝殿に視線を移す。
そこには先程通り過ぎて行った高杉と、隣に真っ黒い傘をさした奴がいた。
人間の気配には敏感である方だと思っていた銀時はぎょっとする。
来た時は誰もいなかったはずだ。寝ていても気配を感じ取ることはできる。何も感じ取れない奴は松陽くらいなものだと思っていた。