第12章 夕顔
ガンガン、と頭を殴られている様な衝撃に銀時は目を覚ました。
外はもう薄暗い。
ソファで寝ていたせいで、全身がバキバキだ。
新八の奴、嫌がらせか?と思いながら、重たい身体をあげてみれば、机の上に走り書きされたメモと薬と水が置いてあった。
どうやら新八と神楽は仕事に出たまま、お妙のところで飯を済ませてくる様であった。
情けねぇな、とふと思う。
惚れた女に振られたくらいで、なんなんだこの為体は。
もういい加減、どうにかしねぇとなこの気持ちも、と考えながら用意してもらった薬を飲む。
それと同時、家のチャイムが鳴った。
居留守を使って流そうかとも考えたが、仕事をしたであろう二人の顔を思い出して玄関に向かって叫ぶ。
「あー、開いてるんで、どーぞー。」
まるでお客様に対する態度ではない。
だがここに依頼にくるような客は、このくらいの事を一々気にする様な奴はいない。
案の定、ガラガラと戸を開ける音がした後、控えめなお邪魔しますという声が聞こえる。いつもなら、玄関先くらいまでは顔をだす銀時だったが、生憎今は動ける状態ではない。
だが、廊下から覗いた意外な顔に、ソファに預け切っていた身体を思わず起こした。
「こ、こんばんわ。随分と具合わるそうですね。」
大丈夫ですか?と声をかけてきたのは、もうここ数ヶ月で見慣れたものとなっていた皐月の所の子だった。
「お、おぉ。久しぶりぃ。」
失恋から立ち直ろうと気合を入れ直したところに、まさかのボディブローが決まった感じだった。どうやっても神は自分を痛めつけたいらしい。
「どうしたよ、あいつ元気か?」
とりあえず座れば?となんて事ない風に声をかければ、ハルは遠慮がちに銀時の向かいに座った。