第12章 夕顔
遂に、銀時が壊れた。
新八はそう思った。
いつからか、銀時は夜出かけなくなったと神楽からきいた新八。もしかして、例の女の人と喧嘩でもしたか。とも思った。
だが、朝方家に帰ってくるあの顔を見なくても良くなるなら、それも良かったのかもしれないと思っていた。
しかし、それは大きな勘違いだった。
確かに今までひどい顔をして帰ってきてはいたが、出かけなくなってからの方がひどい有様だった。
寝ているのか、寝ていないのかもわからない。
食べているのか、食べていないのかもわからない。
最初はまた暫くすれば戻るだろうと思っていれば、それも違った。
そのうちまた夜出ていくようになり、眠そうにだけして帰ってきてた時とはちがう、完全に飲んだくれて帰ってくるようになった。
そうなってからは以前のヘラヘラがすこし戻ったようにも見えた。
でも、新八には見ていられなかった。
「……銀さん。お話をしましょう。」
「うぇ?なぁ〜に?あったまいてぇー。後にしてくれぃ新八ぃ。」
ふらふらと朝方帰ってきた銀時を玄関で待ち伏せた。
案の定、自分の足をもつれさせて顔面からすっ転ぶ彼。いつもなら、呆れながらも笑っていられたが、今回はそうもいかない。
「銀さん、いい加減にしてください。最近どうしちゃったんですか。アンタ、本当にこのままだと、どっかで野垂れ死しますよ。」
新八にしては凄んだ声。
銀時の働かない頭でも、それは感じていた。
自分がどうしようもないことになっているのは、銀時が一番わかっていた。だが、こればっかりは彼もどうしようもない。皐月に拒絶されてしまったのだ。好きでない、と言われたような物だ。
黙ったまま動かなくなった銀時に、新八はため息をつき、肩を貸してソファまで運んだ。いい大人が、恋に振り回されて何をしているんだ、と思う。今まで爛れた恋愛しかしてこないからこうなるんだよ、知らないけど、と新八は心の中で銀時に言った。