第12章 夕顔
そうしてその日も、銀時は目の周りを真っ黒にして帰宅した。
いつもお小言を言う新八が、今日は静かだった。
いつも部屋に中々入れさせてくれない神楽が、今日はすんなり通してくれた。
違和感しかない中、布団に寝転んで皐月のことを考える。
彼女があんな雰囲気になってから、銀時は一つ、目を背けていた事を認めた。それは、皐月が想っているのは自分では無いのではないか、という事。
煙管を握って夜空を見上げる彼女を見るたび、銀時は胸が痛かった。高杉に想いを馳せているに違いないのだ。きっと自分の気持ちを誤魔化していたに違いない。その事に、彼女は気付いてしまったのではないか。そう思えて仕方がなかった。
あの二年間。皐月の生を支えていたのは、間違いなく高杉だ。死んだ後だって、あぁして彼女の心に在り続けている。
もう皐月を一人にしない、と誓った。彼女の背負うものは、野郎の彼女への想いと一緒に自分も背負おう、と決めた。なのに、それはこんなにも辛いのか。
天井を見上げていた顔の上に、自身の腕を置いて強制的に視界を遮断した。
今夜もまた、一人で泣いてしまうであろう彼女の元に行かなければならない。そう思いながら、耐えられない睡魔に抗う事なく意識を手放した。
だがこの時銀時は知らなかった。
その夜、彼女に会えないなんて。