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夕顔

第11章 夜と罪





「ったく、いい様だなぁ銀時。」

静かに笑う高杉を、銀時は横目で睨む。
先程まで血反吐を吐いていた様には見えない。どうにかして眠りにつかせてやろうと悩んでいる銀時の隣、高杉は反対の縁に、夜にも関わらず傘をさして座る者へと視線を向けた。それに気づいた銀時もまた、同じ方へと顔を向ける。


「この二年間、ずっと一緒だったのか。」

「あぁ。」


皐月はあれから、高杉と共に虚の因子を追ってきた。
彼女が彼に出来ることは、それだけだった。
男女が二人きり、しかも男が惚れているとあっては何かありそうなものだが、驚くほど何もない。ただ二人は目的のためだけに行動していた。


「それも信じがてぇ話ってもんだ。昔、俺と皐月がちょーっと喋るだけで目ん玉血走らせてた奴が、手ぇ出してねぇ方があり得ないだろ。」

さっきのお返しとばかりに言ったつもりだったが、この二年の壁は大きかったらしい。高杉には擦り傷一つつけられず、鼻で笑われて終わった。その事にさらに苛立つ銀時。こちらに背を向けている彼女は未だに彼と顔を合わせようともしない。

「安心しな、銀時。俺ぁ、あいつの体のどこに奈落の印がはいってんのかも知るめぇよ。」


それは俺も覚えてねぇ、と言う言葉は最後の意地で口にしなかった。



「地獄の共くらいするさ。…もう一人で待ってんのもつまらねぇってもんだ。」

そう言う高杉の顔は少し切なく見えた。
そのらしくない顔に小さく舌打ちをして、銀時は船内へ戻って行った。
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