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夕顔

第10章 人生も人間もバグだらけ






くらくらする頭とぼろぼろの身体を無理やりに引きずってたどり着いた先。皐月はまた新しい事を学んだ。


「もう、こんなに動けないと思っていたんだが。案外気合でどうにかなるものだな。」

「………いき、てたか。」


鼻だけを頼りに向かった場所には、ちゃんと探し人はいた。まさに自身の心臓を串刺そうとしている高杉が。
それを目に入れた瞬間、反射的に体が動いていた。杖にしていた傘で、彼の刀をギリギリで止める。


「迎えに来たか?…だがわりぃな、まだいけねぇよ。」

息も絶え絶えに言葉を紡ぐ高杉は、どう見ても瀕死の状態。誰かに殺されるくらいなら、自害しようとしているのかと思えばそうではないらしい。

皐月は力の抜けた彼の手から刀を奪い、正面に回り込んだ。そこで体力の尽きた身体に抗わず彼女は、高杉の前に座り込む。
彼はそんな彼女の首筋に頭を預けた。

「……これは?」

刀を奪った時に落ちた小さな巾着に目を向けて高杉に問う。

「……兄弟子の魂だ。俺ぁ、まだ死ねねぇんだ。」

朧の何かだろう。そう言えば、彼が朧の遺体を回収していた事を思い出して、皐月は高杉が何をしようとしていたのかを悟った。

きっと、少しでも生きながらえる為に、力を借りようとしたのだろう。あの不死の血の力を。

だがそんな事をしたら、虚の血を根絶やしにする際、自身すらもその対象に入ってしまう。その血をなによりも憎み、救いたがっていた彼が、自らその存在になるというのか。

師を救うため、目の前でしがらみに囚われようとする高杉を、見過ごせと言うのか…。


皐月にそんなことは出来なかった。

死の淵で、彼女を昔のしがらみから解放してくれたのは他でもない高杉だ。見て見ぬふりなど、できるわけがなかった。


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