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夕顔

第10章 人生も人間もバグだらけ






「……君は、僕が殺す。」

間近にいる高杉に聞こえるか、聞こえないかくらい小さな声でま皐月は呟いた。そして、落ちていた袋を拾う。


「君は、今此処で僕に殺されるんだ。いいな。」

「……もう時間がねぇ。ふざけんな。」


段々と虫の息になり始める高杉を横目に、彼女は今まで一度も首から外してこなかったそれを外すし、拾った袋へとしまった。
そして、静かにそれを彼の心臓の上に重ねる。



「晋助、君の師と兄弟子を信じ、僕を恨んで死んでくれ。」

その言葉を放った直後、皐月は袋と高杉の心臓を彼の刀で突き刺した。刀の付け根が、胸に触れるくらい深くまで。
耳元で、彼の尋常ではない叫び声が響く。
それでも彼女は目を瞑らず、耳を塞がず、刀から手を離さなかった。




暫くしてから、彼女は刺していたもの抜く。
元々無理に動かしていた身体だ。限界がきてしまった。

完全に意識が飛んでしまう直前。誰かに腰を支えられる様にして抱き寄せられたような気がしたが、その感覚を確かめる前に彼女はそれを手放してしまう。



「……やっと、捕まったな。」

そんな高杉の呟きは、彼女には届かなかった。
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