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夕顔

第10章 人生も人間もバグだらけ





「……その花は?」

高杉の言葉へ何も返せなかった皐月は、彼の手にある白菫を指さした。すると、高杉はその花を彼女へ差し出す。

「これは、お前にやるのに持ってきたやつだ。」

「僕に……。」

昔受け取ったようにできないのは、自分が大人になりすぎたせいなのだろうか。どうするべきかあぐねていれば、突然、高杉が話題を変えて話し出した。


「あいつは、ずっとシケたつらして竹刀振ってるぜ。」

「あいつっていうのは、銀時の事か?」

あぁ、と肯定すると、高杉は続けた。

「いつぞやの日と同じで、おめぇと最後にあったのはあいつだからな。責めてやろうと思ったのによ。…あんな顔した野郎にかけるもんなんざ砂糖くらいならもんだ。」

「何考えてんのかまでは知らねぇ、興味もねぇけどよ。気の抜けたあの面がどっか痛々しいんでうざいのなんのって話だ。」

「だからよ、早く帰って来いよ。あのアホが待ってんだ。これなら皐月も帰ってくるよな?」


そう言って高杉は皐月の手を引いて立ち上がらせた。どこにそんな力があるのか、子供とは思えない強力で引っ張られながら階段を降りて石段の方へ向かう。

銀時は待っていてくれたのか。
あの日、会えなくなってしまうのを気にしていたのは自分だけじゃなかったのか。
そう思うと自然と心と足が軽くなった様な気がした。




もう帰れないと思っていた場所に、また帰れるのだろうか。
あの時、銀時と勝手に交わした約束すら守れないような自分だが、もう一度、戻ってもいいのだろうか…。











……約束?
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