第10章 人生も人間もバグだらけ
「……銀時を守るだなんだと色々並べ、言い訳をして、結局僕は自分の事しか最期まで考えていなかったのだな。」
何か理由を付けていないと、暗闇に一人でいられなかった。
そのくらい、四人でいたあの場所が好きだった。
銀時の事が好きだった。
ふと突然、前に気配を感じて皐月は顔を上げた。
「皐月…か?」
「…晋助?」
いつの間にやら、目の前に子供の時の高杉が立っていた。
その彼の手にはいつかのように白い花が握られている。
「全然こねぇと思ってたら、んでまたそんなデカくなってんだ?」
「……??」
少しだけ嬉しそうに、高杉は段差を上がって皐月の隣に腰掛けた。彼の言葉の意味を必死に理解しようとするが、彼女にはわからない。一体どういう事か。
「皐月がこねぇ様になってから、毎日ヅラは探し回ってんぜ。」
「僕が……こなくなって?」
もしかして、僕が任務を外された日以降の事を言われているのだろうか。
「あぁ。俺ぁ、お前がくるならここだと思ってずっと来てたけどな。」
やっぱ来たな、とあどけなく笑う高杉に皐月は心臓を握られた様な気がした。何だというのだ。
「……なんで勝手にいなくなる様な者を探すのだ。意味なんかないだろう、そんなことをしたって。」
「なんで、ってそりゃてめぇ、」
そこで言葉を切った高杉の方へ彼女は顔を向ける。
少し頬が赤いのは決して陽のせいではないだろう。何度か深く呼吸をして、意を決したような顔を彼はこちらに向けた。
「大事な奴、消えて気にしねぇってのが無理だろうよ。俺ぁ……俺は、皐月が好きだ。」
だから、ずっと待ってたんだ。
なんの飾りもない真っ直ぐな言葉に、皐月は胸を打たれた。なんて純粋で、無邪気で、…綺麗なのだろうか。
高杉の言った"好き"という言葉が、親愛でない事くらいは彼女にもわかる。では、この彼の言った言葉と、自分が銀時へ向けるものが同じだったと言っていいのだろうか。自分が持っていたものは、こんなに美しいものだっただろうか。