第7章 相変わらずな君と僕【リヴァイ】
軽くシャワーを浴びた俺は、濡れた髪をタオルで雑に拭きながら洗面台の前に立った。
コップの中では、相変わらず、青の歯ブラシに寄り添うようにピンク色の歯ブラシが並んでいる。
(捨てねぇとな。)
ピンク色の歯ブラシを手に取って、ゴミ箱の上にまで持って行く。
後は、歯ブラシを握りしめるこの手を離すだけでいい。
そうやって、ちゃんと捨てないといけないのだ。
がもう使うことのない歯ブラシも、を想ってる未練たらしい気持ちもー。
でも、今日も俺はこの手を離すことは出来ないまま、また青い歯ブラシの隣に並べてしまう。
鏡には、疲れた顔で歯を磨いている俺が映っている。
コップの中に寄り添って入ってた歯ブラシと同じように、ここでと2人で並んで歯磨きをしていた頃は、モゴモゴと喋りながら、今日の予定なんかをお互いに教え合ったりしていたっけ。
別に、いつかが戻ってくるかもしれない、なんて愚かな期待をして、歯磨きを残しているわけじゃない。
長い倦怠期にも嫌気がさして別れた俺達は、もう一度やり直すことなんてきっとないのだと思ってる。
だからせめてー。
ほんの少し、まだあと少し、あと数秒だけでもいいから、俺の中にと過ごした時間を残していたかった。
歯磨きを終わらせた俺は、リビングに戻ってからキッチンで朝食の準備を始める。
まずは、やかんに水を入れて沸かす。
その間に、キッチンの棚を開けて紅茶の葉を入れてある瓶を取り出した。
『ほんと、リヴァイって掃除以外は何も出来ないよね。』
呆れた様にため息を吐いていたを思い出したから、自慢してやりたくなる。
確かにが出て行ってすぐの頃は、紅茶の葉を入れてある瓶の在り処すら分からずに困ったけれど、今ではもう1人で何でも出来るのだ。
(湯が沸く前に、パンでも焼いておくか。)
コンビニ弁当や外食ばかりでは身体を壊すとがいつも言っていたから、無添加をうたってる食パンを昨日の仕事帰りにコンビニで買ってきたのを思い出した。
早速袋から取り出して、トースターの網の上に乗せた。
何分くらい焼けばいいか分からなかったから、とりあえず10分くらいに設定した。
後は、時々、様子を見ればいい。