第8章 scene2:ハートのバスタブ
「ねぇ、バスルームに行かない?」
カメラのフラッシュを浴びながら、NINOが僕の手を引く。
「で、でも…」
お風呂なんて入ったら、メイクが落ちちゃう…
「ね、良いでしょ? このお部屋のバスルーム、とっても可愛いのよ?」
え、そう…なの?
本来の僕…智の時は、“可愛い”なんて言葉には全く反応しないのに、HIMEになるとついつい心が揺れてしまう僕。
仕方ないんだけどね?
だってHIMEは可愛い物が大好きだから♡
でもやっぱりメイクが落ちるのは困るしな…
どうしよう…
なんて迷ってる僕の横で、
「そうだわ、バスルームでお写真撮らない? ね、良いわよね、監督?」
「ああ、それナイスな考えだね」
「ほら、監督さんも良いって言ってるし、HIMEちゃんも、ね?」
どんどん進んで行く話…
こうなったらもうお腹(HIMEの口からは、“腹”なんて言えないの…)括るしかないわよね…?
「じゃあ…、ちょっとだけ…。あ、でもお顔は…」
「くく、心配しないで? お顔が濡れて困るのは、HIMEちゃんだけじゃないから」
あ、そっか…
NINOも僕と同じで、素顔は一切公開してないんだっけ…
「行きましょ?」
肩にかけていたバスローブをパサリと脱ぎ捨て、NINOが再び僕の手を引く。
僕は“うん”と頷くと、NINOと同じようにバスローブを脱ぎ、ベッドの上に放り投げた。
今更恥ずかしがる必要もないから、お互い“立派な子”と“可愛い子”をブランブランさせながらバスルームに向かう。
その後を、チャックが全開になったズボンに気付くことなく、国分監督が着いて来る。
それを見て、僕達はまた顔を見合わせてクスクス笑った。