第34章 scene6:HIMEは君の中にずーっといるよ♡
「じゃあ僕帰るね」
キッチンでは、先発でフライパンに並べられたのギョーザが良い匂いを漂わせてて、僕のお腹が誘惑に負けちゃいそうになるけど、誘惑に負けちゃダメダメ…
僕はなるべく鼻で息をしないように、息を止めてリビングのドアを開けようとした。
うん、僕は開けようと“した”だけ。
ドアノブを握った瞬間、勝手にドアが開いて…
「いったぁ〜い…」
僕は開いたドアに弾かれるように、その場に尻もちを着いた。
「痛たたたた…」
本日何度目かの腰の強打に、半べそをかきながらお顔を上げると、そこには真っ黒なサングラスをかけて、真っ黒なスーツを着た…、一見すると海外ドラマで見かけるような、ボディガードっぽい人が立っていて…
「え、何で…?」
僕が驚きの声を上げると、ボディガードもどき…じゃなくて、松本さんは小さく息を吐き出してから、
「やっぱりここにいたか…」
って言いながら、僕に差し出して来た。
ってゆーか、やっぱりって?
「お前…、翔が探してたぞ?」
え、翔くんが?
「出かけるならスマホくらい持って出ろ」
だってさ、スマホとか持つ余裕もないくらい、あの時は腹が立ってたんだもん。
「心配…してた?」
「当たり前だろ…。今にも死にそうな声で電話かかって来たし…」
そう…なんだ…、心配してくれたんだ?
ってゆーか…
「ねぇ、お客さんて松本さんのことだったの?」
「あ、ああ、まあな。つか、腹減った」
僕を引き起こし、軽々と抱き上げた松本さんが、僕をソファにソーッと下ろすと、真っ黒いジャケットを脱ぎ、キッチンで大量のギョーザを焼く相葉さんの隣に立った。
真っ黒いサングラスはしっかりかけたままで(笑)
「ねぇ、彼氏心配してんでしょ? 電話して上げたら?」
和が自分のスマホを差し出しながら、“ね?”と微笑む。
でもさ…、何で僕から?
そんなに心配なら、翔くんの方から電話してくれば良くない?
…って、僕素直じゃない…よね?