第34章 scene6:HIMEは君の中にずーっといるよ♡
僕達が“練習”の結婚式を挙げてから半月が過ぎた頃、僕の元にやたらと大きなダンボールの荷物が届いた。
送り主は、僕が“男の娘”アイドルとしてお世話になっていた事務所からだった。
何だろうと思って開けてみると、中には僕宛てのお手紙がたーっくさん入っていて…
いくつか封を開けて中の便箋を広げてみると、どうやらファンレターってやつらしくて、どれも凄く温かい言葉が綴られていた。
まあ…、差出人の名前は全部男名義だし、可愛らしい便箋に並ぶ文字は、どっからどう見たって男の人ならではの、ダイナミックな文字ばっかだし、何回ヌいただの、オカズにしてますだの、とーってもお下品な言葉が並んでたりするんだけどさ…
でも、「ありがとう」とか「HIMEちゃんに会えなくなると寂しい」とかさ…、そーゆーの見てると胸がジワーっと熱くなっちゃって…
僕はダンボールいっぱいのお手紙を床に広げて、一人鼻を啜った。
そんな僕の様子を、手の中でスマホを弄りながら見ていた翔くんが、黙ってティッシュを一枚差し出してくれたけど、全然足りないよ…
一箱あったって足りないかも…
でもその優しさが僕は嬉しい。
「何かさ、今までもお手紙とか…貰ったことはあるけど、凄く嬉しいモンなんだね…」
そりゃさ、翔くんみたいに直接会ってお話が出来るわけでも、お顔が見れるわけでもないから、中にはニキビくんみたいな人もいっぱいいるのかもだけど、それでもやっぱり嬉しいことには変わりない。
僕は床に広げたお手紙を掻き集めていくつかの束にすると、丁寧にダンボールの中に仕舞った。
その時…
「あれ? まだ何か入ってる」
ダンボールの底に、お手紙とは遥かにサイズの違う、茶封筒があるのに気が付いた。
手に取ってみると、厚さも明らかに違う。
なんだろう?