第33章 scene6:君だけのHIME…にして?
それでも翔くんにはちゃんと通じたみたいで…
それまでベッドの端っこにチョコンと座ってたのを、わざわざベッドの上まで移動して、僕と同じように正座をして、それから三指を着いて、
「こちらこそ、宜しく…です」
僕に向かって頭を深々と下げた。
でもさ、こーゆうのって、いつ頭を上げたら良いのか、タイミングが分かんないんだよね…
結局、お互いが吹き出すまで頭を下げ続けた僕達は、ほぼ同じタイミングで頭を上げると同時に、見つめ合ったままキスをした。
そしてそのままベッドに押し倒され、翔くんが僕に覆い被さった。
でもその時になって僕気がついたんだ、自分がHIMEの姿のままだってことに…
どうしよう…
僕的にはHIMEとして翔くんに抱かれるのは、本当は嫌ってわけじゃないけど、ちょっぴり抵抗がある。
だって、翔くんに抱かれるのは、お仕事でも何でもないから…
だから本当はちゃんと“智”として抱かれたいのに、この状況じゃ…無理だよね?
「どうしたの? あ、やっぱり気分悪い? だったら…」
「違うの…、そうじゃなくて…」
「じゃあ…、何?」
「ううん、何でもないの…。ただ、HIMEの姿のままだと、ちょっぴり恥ずかしいかな…って…」
翔くんが知ってる僕じゃなくなる気がして…
「くく、なんだそんなこと?」
翔くんは“そんなこと”って言うけど、僕にとっては大問題なんだけど?
「あのさ、言ったでしょ? 見た目がHIMEだったとしても、中身は智くんなんだから、俺は見た目なんて気にしないし、寧ろ俺の知らない智くんが見れるなら、それも悪くないかも(笑)」
「本当… に?」
「うん、本当だよ? だから集中して?」
「うん…」
僕は静かに目を閉じると、ゆっくりと降りて来る翔くんの唇を、ピンク色の唇にしっかりと受け止めた。