第33章 scene6:君だけのHIME…にして?
見事なグロッキー状態でマンションへと帰った僕は、ゆっくり翔くんの背中からベッドに降ろされた。
「水、持って来るから」
そう言って僕の蕎を離れて行こうとするから、僕は慌てて翔くんの腕を掴んだ。
そしたら翔くんね、
「すぐ戻るから待ってて?」
って僕の頭を撫でてくれて…
なのに掴んだ手を離せないでいる僕に、翔くんは頬にキスをしてくれて…
でもやっぱり手を離すことが出来なくて…
「どうしたの(笑)」
翔くんは笑うけど、僕にだって分かんないよ。
ううん、本当は分かってる…
分かってるんだよ…
そんな豪邸でもないし、キッチンに行って戻って来るだけなら、きっと五分もかからないだろうし…
たとえ離れていたとしたって、翔くんの存在は感じられるだろうし、足音だって聞こえる。
なのにこんなにも離れたくないなんて…
僕…、凄くワガママになってるみたい。
「本当にすぐ戻ってくる?」
「うん、すぐ戻ってくるよ」
「本当に本当?」
あんまりしつこくしたら、翔くんに嫌われちゃうかな?
「うん、本当に本当。だからちょっと待ってて?」
「分かった…。僕待ってる」
僕は漸く翔くんの手を離すと、翔くんがかけてくれたタオルケットの端をキュッと握った。
う〜、それにしても気持ち悪いよぉ…
翔くんが手を握っててくれた時は平気だったのに、翔くんが僕から離れて行った途端、ムカムカが込み上げて来る。
もお…、絶対松本さんのせいだ。
今日は大事な大事な“初夜”だって言ってるのに、グラスが空になる度に、次から次へとワインを注いで来るんだもん。
僕が断れないの知っててさ…
別にお酒が飲めないわけでもないし、なんなら強い方だとは思うけどさ、限度ってもんがあると思うんだよね…
僕もう松本さんとは絶〜っ対お酒飲みに行かないんだからね!