第32章 scene6:僕はHIME…
「私ね、嬉しいの」
え…?
「私達みたいなマイノリティ…、特にセクシャルマイノリティと呼ばれる人達にとって、運命の人に出会えることって、とても難しいことだもの…」
うん…、それは僕もいつも…ってゆーか、自分がゲイだって気付いた時からずっと感じていた。
だって世の中沢山の人がいるけど、その殆どはノーマルなわけで、そんな中で僕達みたいな種類の人間が、本当に好きな人と結ばれる確率なんて、本当に低いと思うもん。
現に、僕の恋愛成功率は、ほぼ全戦全敗状態だし…
「智くんが本当に心から好きだと思える人と結ばれたことが、私は本当に嬉しいの」
「斗子さん…」
「この花冠には、智くんの恋が永遠に続きますように、って願いも込められてるの。だから受け取って?」
いつか流行った歌の歌詞みたいで、なんだか凄く照れくさいけど、どうしてだろう…凄く胸が暖かくなるのを感じる。
「僕…、幸せになれるかな…?」
「ええ、きっと…」
そうだよね、翔くんとならきっと…
勿論、この先僕達の関係がどうなるかなんて、誰にも分からないことだし、そもそも僕達はまだ付き合って数日しか経ってないわけだし、お互い知らないことだっていっぱいあるし…
でも翔くんとなら…
「斗子さん、ありがとう。僕、大事にするね♪」
僕は少しだけ背伸びをすると、斗子さんの頬に軽くキスをした。
長瀬さんが見たら、きっと目ん玉ひんむいて怒るんだろうけど、鬼軍曹は今はここにはいないしね(笑)
「ところで、その“噂の彼氏”はどこに? 一緒じゃないの?」
「うん。なんかね、どこかで待ってるらしいんだけど、僕は何も聞かされてなくて…」
だから翔くんが今どこにいるのか、僕は全く知らないの。
「あら、そうなの?」
「え、斗子さんも知らなかった…の?」
僕は、斗子さんのことだから、てっきり長瀬さんから何か聞いてるのかとも思ったけど…、とうやら違ったみなさたいた。