第32章 scene６:僕はHIME…

｢わぁ…、素敵♡｣

鏡に映っているのは、勿論…とゆーか、当然“僕”なんだけど、斗子さんの手にかかると、まるで別人のように見えるから不思議。

なんて言ったら良いのか…、“HIMEらしさに磨きがかかった”って感じ？

僕が理想としていた“HIME”に近い気がする。

｢後はリップなんだけど…、どの色が良いかしら？｣

斗子さんがパレットを広げながら、鏡越しに僕に問いかける。

けどさ、こんなに沢山の色が並んでたらさ、僕選びきれないよ…

だからこーゆー時は、

｢僕分かんないから、斗子さんにお任せしても良い？｣

プロの判断に委ねた方が、確実に間違いがない。

それに斗子さんなら、僕の好みとかもよーっく分かってるから、安心だし♪

｢そうね…、この色なんか良いんじゃないかしら…｣

そう言って斗子さんが指差したのは、パッと見赤にも見えるんだけど、パールの入ったピンク系のリップで…

｢え、可愛い♡｣

僕の好きな色だ。

｢この色ね、実は今度発売予定での新色で、サンプルが届いたばかりなのよ？｣

｢え、そうなの？｣

｢でも、HIMEちゃんに似合いそうだし、どう？ 使ってみる？｣

｢うん、勿論♪｣

ふふ、こう見えて僕、案外新しい物好きだったりするんだよね。

色とかに関しては特にね。

｢じゃあ…、リップはこの色で…、あとウィッグなんだけど、HIMEちゃんいつも割と明るめの色が多いんだけど、今回はちょっと暗い色のウィッグにしてみたんだけど、どうかしら？｣

斗子さんは言いながらスタッフのお姉さんに指示を出すと、無惨にも(いやいや、元々そうゆーもんだし！)首だけになったマネキンをワゴンの上に乗せ、そこにウィッグを被せた。

｢え、素敵♡｣

確かに斗子さんの言う通り、普段僕が使ってるウィッグに比べると、かなり色も暗めだし、カール具合も少なめなんだけど、凄く大人っぽい雰囲気がある。

リップの色もそうなんだけど、やっぱり斗子さんてセンスが良い♪