第32章 scene6:僕はHIME…
図星を指されて俯く僕…
実は、お仕事を辞めてから、3キロくらい体重増えちゃったんだよね…
多分実家に帰ったせいもあるんだろうけどさ…
だって肉体労働ってお腹空くんだもん。
それにさ、母ちゃんの料理美味過ぎなんだもん。
そりゃ太るよね…
「着れない?」
不安になって斗子さんのお顔を見上げると、斗子さんはニッコリ笑って僕のお腹をプニッと摘んだ。
「これくらいならそうね…、ウエストのリボンで調節出来るから大丈夫かな」
「本当? 良かったぁ…」
斗子さんの言葉に安心した僕は、斗子さんに抱きついたまま、サロンの中へと入った。
すると、スタッフさんが数人並んで出迎えてくれて、僕は場違い過ぎる自分の身なりに、ちょっぴり恥ずかしくなってしまう。
だってさ、お姉さん達皆綺麗なんだもん…
羨ましくなっちゃうよ…
「さ、時間もそんなにないし、早速だけど始めましょうか?」
「はぁい♪」
僕はスタッフさんの案内で、ヘアとメイク専用のお部屋に通されると、フカフカクッションが座り心地の良い椅子に座った。
ピンクのケープを首に巻かれて、金で縁取られた鏡に向かう。
そうすると、やっぱりってゆーか、自然と気持ちに変化が現れて来る。
“僕はHIMEなんだ”って…
「じゃあメイクから始めるわね?」
鏡越しに言われて、僕は小さく頷いてから、瞼をそっと閉じた。
すると、斗子さんの指が僕のお顔に触れ、軽くマッサージをしながらクリームを塗り始め…
続けてファンデーションやら、チークやら、アイシャドウやら…、流石プロだなって感じる手際の良さで、僕のお顔にメイクを施して行った。
「ちょっと目開けてみてくれる?」
それまでずっと瞼を閉じたままだった僕は、言われて初めてゆっくり瞼を持ち上げた。
そして鏡に映った自分の姿に、驚きの声を上げた。