第28章 日常13:夢なら醒めないで…
僕を見下ろす翔くんの首に腕を回す。
「ねぇ、もう一回キス…して?」
「えっ…?」
「あのね、さっきみたいなキス…、して?」
頭の芯から溶けちゃうような…ううん、さっきよりも、もっともーっと甘くて濃ゆいキスが欲しいの。
「いいけど…、そうしたら俺…、もう止めらんないかもよ?」
えっ…?
「それに俺、あんま慣れてないからないから、智くんを満足させて上げられないかもしれないけど…」
あ、そっか…、そうだよね?
だって翔くんは…
「ううん、そんなの全然気にしないよ? だって童貞くんだもん、仕方ないよ…」
その分僕がリードすれば良いだけのことだもん。
ほら、僕ってば、“抱く”ことには慣れてないけど、“抱かれる”ことなら慣れてるから♪
「だから安心して?」
もう翔くんを不安にさせたりしないから…
「あ、あ、う、うん…、つか、俺…、童貞じゃないけど?」
へ?
ちょっと待って、どゆ…こと…?
「え、で、でも前に聞いた時は…」
僕、大事なことだと思って、それだけはちゃんと覚えてるもん。
それに翔くんだって「うん」って言ったもん。
「あの時は …確かにそう言ったけど、実は…」
翔くんが口篭り、僕から視線を逸らす。
あ、まさかと思うけど…ってゆーか、そんなこと考えたくもないけど…
「あの後誰かに…その…なんてゆーか…、筆おろしして貰った…とか?」
「ふ、ふ、筆おろしって…、ぷぷぷ(笑) 凄い言葉知ってんね?(笑)」
そりゃこう見えて僕、AV業界にいましたから…って、そんな自慢してる場合じゃなくて…
別にさ、僕だって翔くんが“初めて”ってわけじゃないから、翔くんが誰かと…ってなったって、僕が文句を言える立場にないんだけどさ、でもあの時には…和のお部屋でお触りっこした時には、もう僕のこと好きでいてくれてたんだ…よね?
そるなのに?
え、違うの?
また僕の勘違いなの?