第28章 日常13:夢なら醒めないで…
自己嫌悪…ってゆーのかな…、僕は小さく息を吐き出すと、身体を起こして翔くんの上から降りた。
「どう…したの…?」
ベッドに横たわったままの翔くんが、僕を見上げて不安な顔をする。
当然だよね。
前にね、初めてAVに出演するって男優さんを相手しなきゃな時があって、その男優さん途中までは凄くノリノリだったんだけど、いざ挿入…ってなった途端、急に不安顔になっちゃって…
その時監督さんが言ってた言葉を思い出した。
“リードするべき人間が不安な顔したら、相手はもっと不安になるんだぞ”って…
“少しでも不安を感じていたら、最高のセックスなんて出来ないんだぞ”って…
今の僕って正に“ソレ”で…、翔くんを凄く不安にさせてる。
こんなんじゃきっと翔くんに辛い想いをさせることになっちゃう。
そんなの絶対ダメだし、僕だって嫌だ。
「ごめんね…? 僕、やっぱり無理みたい…」
「え…?」
「僕ね、翔くんがちゃんと気持ち良くなれるように頑張ろうと思ったのね? でもさ、僕初めてだから、どうしたら翔くんに気持ち良くなって貰えるのかさ、全然分からなくて… 」
頭ではちゃんと分かってる。
順番だって…、どこから始めて、どこに何をして、どこにナニを挿れるか…、ちゃんと分かってる。
でもさ、頭で分かってるだけで、身体はそうじゃない。
はあ…、何だか自分が情けなくなってきちゃったよ…
「僕、今度(…があれば、の話だけど…)までに出来るように、ちゃんとお勉強しておくから、その時まで待っててくれる?」
お勉強なんか大っ嫌いだけど、翔くんのためなら頑張れそうな気がするから…
「あー、えっと…、その…さ、なんつーか…」
「あ、翔くんのせいじゃないからね? 僕がダメなんだから…」
「い、いや…、そうじゃなくて…さ、俺って…、智くんに抱かれる….ってことなの?」
へ?
翔くん…、この状況で何言ってんの?
ってゆーか…、えっ…?