第27章 日常12:僕、さよなら…、だよ
新しい部屋は、広さは勿論のこと・、収納力も以前のアパートに比べたら格段に増えていて、元々少なかった僕の荷物は、暮らし始めて二日も過ぎた頃には綺麗に片付いていた。
ただ困ったのが、大きめのクリアボックスに三つ程ある、HIME専用グッズの数々の置き場だ。
衣装にウィッグ、靴やらアクセサリー類もあれば、下着なんかも入っていて、おまけにメイク道具まであって…
流石にもう使うことはないと思いながらも、処分出来ずに運び込んだ…は良いけど、そのまま外に出しておくわけにもいかず、仕方なくクローゼットの中に押し込んだ。
おかげで、仕舞う筈だった服とか(…って言っても、そんなに沢山じゃないけど)の行き場がなくなっちゃたんだけど、それはまあ仕方ない。
HIMEグッズがドーンと置いてあるよりは、まだマシだもんね(笑)
それに今度のお部屋はロフトもあることだし、必要の無い物は全部ロフトに上げてしまえば良い。
「ふぅ…、これで何とか住みやすくはなったかな…」
ベッドを置いたら若干狭くなった気はするけど、どうせ一人だし、尋ねて来る友達だってそうはいないしね。
だいたいさ、この部屋だって今の僕には贅沢過ぎる。
なんだって僕今、無職のプー太郎さんなんだもん♪
「あ、そう言えば…」
長瀬さんからメール来てたっけ…」
久しぶりに見る名前に、メールを開く指が心做しか震えた。
まさか、ちゃんと契約書だって返して貰ったし、退職金(?)も貰ったし、餞別のハンバーガーだって貰ったのに、またお仕事のお話じゃないよね?
僕は内心いやーな予感を感じながら、長瀬さんからのメールに目を通した。
「えっ…?」
そこには僕が心配したような内容の文章はなく、代わりに5を先頭に、0が五個も並んだ数字が書かれていて…
メールの最後には、僕が最後に出演ささたDVDのギャラだ、と記されていた。
ってゆーか、これ貰い過ぎじゃない?
そりゃさ、色々…ツルテカにはなったし、見ず知らずの人達数人に、寄ってたかってあんなことやこんなことされたけど…
とにかく大変だったけど、ちょっとビックリしちゃった…