第26章 日常11:さよなら…言わなきゃだめ?
松本さんは珍しく申し訳なさそう(態度だけね、お顔は…まあ…)にしていて、いつもなら出されたコーヒーだって真っ先に飲む人なのに、今日に限っては一切手を着けようとしない。
松本さんでもそんな時があるんだと、一人感心していると、
「悪いけど水くれない? 俺、今コーヒー絶ってて、コーヒー飲めないんだよね。あ、出来れば常温のミネラルウォーターがあれば、その方が良いんだけど」
なんて言い出すもんだから、やっぱり松本さんはいつどんな時でも松本さんなんだって、ちょっぴり笑ってしまう。
あ、でもちょっと待って?
「あの…、僕が聞いてたお話だと、内緒だって言われたんだけど…、違うの?」
僕が言うと、三人がキョトンとしたお顔をしていて…
「あのさ、智? もう少し分かりやすく話してくんない?」
苦笑いを浮かべる和に言われて、僕の説明が足りなかったことに気付く。
「んと…、僕が聞いてたのは、今回の撮影は関係者以外は知らない、極秘プロジェクト(?)だって…。だから、どうして翔くんが知ってたのかなって…」
「でもそれは松本さんが…、ねえ?」
「うん…」
三人がお顔を見合わせて頷き合うけど、僕が言いたいのはそーゆーことじゃなくて…
「だ、だからね…」
もお…、何て言ったら良いのか分かんないよ。
大体、僕は口下手な方だし、和みたいに頭の回転も早くないから、説明したりするの苦手なのに…
「ひょっとして…なんだけどさ、どうして潤くんが櫻井くんに喋ったのか、って言いたいとか?」
口篭る僕を焦れったく思ったのか、相葉さんが助け舟を出してくれる。
しかも、僕が言いたかったことを、そのままズバッと、ストレートに…
「うん…」
だって、松本さんさえ内緒にしてたら、翔くんがあの場所に来ることはなかった筈だもん。
だからって別に松本さんを疑うわけじゃないけど、やっぱり気になっちゃうんだよね…