第26章 日常11:さよなら…言わなきゃだめ?
僕のHIMEとしての最後の撮影が終わってから一週間が経った。
この一週間、僕はずっと全身の痛みやら、疲れから来る発熱で寝込んでいて…
正直、あの日のことは殆ど覚えていない。
気付いた時には、僕は新婦用の控え室のソファに寝かされていて、NINOが今にも泣きそうな顔して、僕の手を握っていてくれた。
それ以外のことは何も覚えてない…ってのは嘘か…
思い出さないよう、記憶の奥深くに押し込めて、ついでに鍵までかけたんだ。
夢だって思いたかったから…
現実だなんて思いたくなかったから…
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もっとも、実際には夢なんて見る余裕も、翔くんがいつから知ってたかとか、そして知っててどうして僕に黙っていたのか…
そんなこと、とても考えられる状態じゃなかったけど。
和は僕が寝込んでいる間、毎日のように僕のアパートにやって来ては、ご飯を作ってくれたり、お風呂に入るのもままならないくらい筋肉痛で動けない僕の身体を、タオルで丁寧に拭いてくれて…
時にはトイレのお世話までして貰って…
情けなかったよ?
すっごーく、自分が情けなかった。
でも和は良いよって…
僕が、過酷な撮影にも、逃げ出さずにちゃんと頑張ったから、って…
だから、甘えて良いんだよ、って言ってくれた。
泣きそうになるくらい嬉しかった。
通うの面倒だから、、体調が戻るまでの間、マンションに来ても良いとまで言ってくれて…
でも僕知ってるんだ。
僕にあの日何があったのか、知ってるから優しくしてくれるんだって、ちゃんと分かってた。
だから和には申し訳ないと思ったけど、和の言葉に甘えさせて貰うことにした。
それから、バイトも暫く…ってゆーか、辞める可能性も込みで休みを貰うことにした。
贅沢は出来ないけど、それなりの生活が出来る程度は、貯金も溜まってるし…、ギャラだって入るし…
とりあえずお金の苦労はしなくて済みそうだったから…
それに何より、翔くんとお顔を合わせるのが怖かったんだ、凄く…