第24章 scene5:ツルテカな僕
どこまでが真剣なんだか分からなああ冗談を繰り返す相葉さんにお礼を言って(キスはしてないよ!)、車を降りた僕は、やっぱり重さを感じる身体を引きずるようにして、アパートの階段を上り、部屋のドアを開けた。
たった半日留守にしただけで、モアーッとした空気が途端に溢れ出して、さっぱりしてた筈の肌が、じっとりと汗ばんでくる。
僕は電気を付けるのを後回しにして、エアコンの電源を入れた。
エアコンって言っても、僕の部屋にあるのは、所謂“ウインドーファン”ってやつだから、エアコン程の威力はないけど、それでも無いよりはうんとマシだ。
僕は部屋が少し涼しくなるのを待って、漸く部屋の電気を灯すと、カバンの底に入ったままになっていたプライベート用のスマホを充電器に差した。
ろくに充電することなく出てしまったから、充電が切れてたみたい(笑)
「はあ…、なんか疲れちゃったな…」
でも、不思議と嫌な疲れじゃなくて、寧ろ気持ちの良い疲労感なんだけどね?
まあ、ずっと溜まっていたモノを吐き出せた、ってことが大きいんだろうけど…
だってさ、確かに腰は重いし、膝だってガグガクだし、お尻だって違和感ありまくりだけどさ、どっかスッキリしてんだよね(笑)
ふふ、和と相葉さんのおかげかな♪
僕はベッドの上にゴロンと横になると、やっと充電の溜まり始めたスマホに電源を入れた。
すると、数秒も経たないうちに、立て続けに通知音が鳴り響き…
な、何事っ…?
驚いてスマホの画面を見ると、そこには翔くんからのメール着信を記せる通知が並んでいて…
「もう…、纏めて送ってくれれば良いのに…(笑)」
ご丁寧な挨拶から始まり、取り留めのない連続する短文のみのメッセージに、僕は思わず吹き出してしまった。
だってあまりにも翔くんらしいんだもん(笑)
でもさ…
そんな風に笑っていられたのは、多分その時まで。
それから数日後、僕はこれまで生きて来た中で、多分一度も経験したことがないくらいに泣かされることになるなんて、その時の僕はまだ知らなかったから…
『 ツルテカな僕 』 ー完ー