第24章 scene5:ツルテカな僕
リビングに入ることも出来ず、廊下に立って様子を伺っていると…
「ごめん…、仕事の事でちょっとあってさ…」
僕を振り返ることなく、ボソボソと…まるで独り言のように言って、お姉ちゃんが両手で頭を掻きむしった。
「そ、そうなん…だ…?」
良かった…
僕に怒ってるわけじゃないんだね?
「あ、で、でも、都合悪いようなら、僕また出直してくるけど…」
撮影まであまり日がないし、レンタルショップのバイトもあるから、時間がとれるか分かんないから、最悪自分でなんとかするしかないんだけど…
「別に都合は悪くないから…」
「で、でも…」
「いいから気にしないで、こっちおいでよ」
漸く振り向いたお姉ちゃんの顔は、僕が知ってるいつものお顔ではないし、ちょっぴり困った様にも見えるけど、ちゃんと笑っていて…
「うん…」
僕はすっかり棒になりかけていた足をゆっくりと動かすと、ソファに座るお姉ちゃんの横に腰を下ろした。
すると、お姉ちゃんの腕が僕の肩に回されて…
「えっ…?」
思いっきり引き寄せられたかと思うと、いきなり濃厚なキスをされた。
「んっ…、ふぁっ…」
きっと何も口にしていなかったのか、乾いた舌が僕の上顎を舐めながら、戸惑う僕の舌先を絡め取って行く。
いつもなら躊躇うことなく応えてるんだろうけど、いきなりだったからどうして良いのか分からず、僕は息苦しさに耐えきれなくなって、お姉ちゃんの胸をトンと叩いた。
「ごめん、いきなりでビックリした…よね?」
唇を離したお姉ちゃんが、心底申し訳なさそうに眉を下げて、親指の腹で僕の唇を拭った。
「ちょっぴりビックリしちゃったけど、気持ち良かったから大丈夫…」
ホントだよ?
キスなんて久しぶりだったし、それにお姉ちゃんキス上手だし…
だから本当に気持ち良かったんだよ?
なのにさ…
「ク、ククク…、襲われて喜ぶとか、ホントHIMEちゃんは面白いね(笑)」
「そ、そう…かな…」
ってゆーか、面白いって言われたの、今日二回目なんだけど?