第24章 scene5:ツルテカな僕
るすだったらどうしようと、ちょっぴり不安に思いながら部屋番号を押し、コールボタンを押す…けど、いつまで経っても返事はなくて…
既読も付かないままだし、やぱり急用でも出来たのかも…
僕は諦めて地べたに置いた荷物を肩に掛けると、溜息を一つ落としてから踵を返した。
でもその時、建物から出ようとした僕の背後で自動ドアが開いて…
僕は何の疑問も感じることなく、開いたドアの中に飛び込んだ。
だってもしかしたらお昼寝してるだけかもしんないし、お出かけとかだったら、お部屋の前で待ってたらそのうち帰って来るかもしんないしね?
どっちにしてもラッキーってことだよね♪
僕はエレベーターに乗り込み、階数ボタンを押してから、壁に貼られた全身を写せる鏡に向かった。
“お姉ちゃん”のお家にお邪魔するのに、髪がボサボサだったり、メイクが崩れてたりしたら失礼でしょ?
ほら、HIMEってば“智”と違って、美意識高い系男の娘だからさ♪
僕は鏡に向かって手櫛で髪を整え、ファンデーションが剥がれていないか、リップが落ちていないかを確かめると、スカートの裾を軽く摘み、片手をほっぺに当てた、飛び切り可愛い(←自分調べ)ポーズをとった。
「ふふ、今日も可愛いよ♡」
って、自分に暗示をかけながらね♪
そうしていると、目的の階に着いたエレベーターが止まり、ドアが自動で開いた。
「えっとぉ…、お姉ちゃんのお部屋は確か…」
何度も来たことはあるのに、いっつもエレベーターを降りてから右に行くのか左に行くのかで迷ってしまう。
僕って、ホント方向音痴なんだよね…
しかもさ、一応部屋番号は書いてあるけど、どれも同じ色のドアじゃん?
分かりづらいったらありゃしないんだよな…
それに比べたら僕のアパートなんて、部屋数は少ないし、ドアだって塗装の剥げたドアもあれば、ヘンテコな飾りが着いた部屋だってあるから、どんなに酔っ払ってても間違えることないのに…