第24章 scene5:ツルテカな僕
脱いだ服綺麗に畳んでを紙袋に突っ込み、僕は多目的トイレを出た。
入った時は俯きがちだった僕のお顔も、HIMEの姿になった途端に上向きになってしまうから不思議ね?
あ、そうだ…
せっかく“お姉ちゃん”のお家に行くんだもの、手土産の一つも持っていかなきゃだわね?
僕はスマホで長瀬さんにメッセージを送ると、カゴを載せたカートを押して、スーパーの店内へと足を進めた。
でも…
「うーん…、困ったわ…」
相葉さんはスイーツ男子だって自分でも言ってたくらいだし、甘い物でも全然平気なんだろうけど、“お姉ちゃん”は全く…ってわけではないけど、そこまで得意でも無さそうなのよね…
何を持って行ったら喜んでくれるのかしら…
あ、フルーツとか?
うーん…、でもそれならフルーツがたっぷりのタルトの方がHIME的には好みだし…
「困ったわね…」
一応キープとしてフルーツたっぷりのタルトをカゴに入れ、人差し指を顎に小首を傾げていると…
「あの…」
突然背後から声をかけられ、僕の肩がビクンと跳ねた。
「あの、もしかして…」
え、まさか…よね?
だって、一応AVなんてのには出てるけど、すっご〜くマイナージャンルだしぃ〜、HIME的には芸能人とか?そんな風に思ったこともないしぃ〜、だからこんな場所で声をかけられるなんて思ってなかったから、ちょっとビックリしちゃって…
ちょっと振り向くのを躊躇っていると…
「HIMEちゃん…だよね?」
肩をポンと叩かれ、僕の肩が更に大きく跳ね上がった。
だって完全に“HIME”だってバレてるんだもん…
これはもう逃れられないわよね?
僕は栗色の髪を揺らし、クルンと振り返ると、ウイッグが飛んでっちゃうんじゃないかって勢いで頭を下げた。
「あ、あの、ごめんなさい…、HIME、サインとかそーゆーのはお断りするように言われてるので…」
…って、そんなこと一言も言われたことないんだけどね?(笑)