第23章 scene5:“初”エステ♡
良く目を凝らして見てみると、パッと見では全然分からなかった補修跡は、至る所にあって…
僕は、“商品としては扱えない”と言った斗子さんの言葉の意味が、漸く分かった気がした。
「ね? だから勿体無いとか思わなくて良いのよ?」
「本当…に…?」
「ええ、寧ろHIMEちゃんに着て貰えるなら、きっと本望だと思う筈よ?」
本望…は、ちょっと大袈裟なんじゃないかとも思わなくてもないけど、このまま処分されてしまうくらいなら…
「あ、でも買い取りになると高いんでしょ?」
こーゆーのを自分で買ったことはないから、お値段は分からないけど、僕が普段買うお洋服よりは、うんと高いってことだけは分かる。
だって、次のお仕事が決まった後、僕も実際にカタログやネット見たりして、一応僕なりには調べたつもりだもん。
それで、お値段見てチーンてなったもん。
「まあそうね…、いくら処分品だからと言っても、それなりのお値段はするし、安くはないけど…」
ほらやっぱりね?
「でも、その心配はいらないのよね?」
斗子さんが長瀬さんを振り返り、長い睫毛を瞬かせてバチンとウインクをする。
あ、長瀬さんのお顔…、一瞬だけど赤くなった?
「まあ、今回はHIMEの最後の作品でもあるから、社長からは金は惜しむなと言われてるからな…」
え、そう…なの?
じゃあ自腹じゃなくても良いってこと?
「ね? だからHIMEちゃんは何も心配しなくて良いのよ? そうでしょ、智也?」
「まあ…な…」
あ、まただ。
また長瀬さんのお顔赤くなった?
長瀬さんて、いっつも堂々としてて、一見すると怖く見えなくもないけど、恋人ってゆーか、斗子さんの前だと急に可愛くなっちゃうんだね?
ふふ、変な感じ(笑)
でも、良いなあ…こーゆーの。
僕もいつか翔くんと…
なんて夢、まだ見ちゃいけないよね?
だって僕、まだちゃんとケジメ付けてないもん。