第23章 scene5:“初”エステ♡
僕は着ていたTシャツを脱ぐと、パステルブルーの脱衣かごに入れ、続けてハーフパンツのウエストに手をかけた。
すると…
「あら、もっと華奢なのかと思ったら、案外良い身体してるのね?」
斗子さんが、淡いピンクで爪を飾った指で僕のお腹をツーッと撫でた。
え、え、え、ちょっと待って?
僕、そんなつもりでここに来たわけじゃないんだけど?
しかも、斗子さんて、“元男性”だけど今は見た目も、それから戸籍上もれっきとした“女性”なわけで…
ってことはだよ?
まさか僕が斗子さんを?
いやいや、それはないでしよ…
だって僕…
後ろはバージンじゃないけど、前はしっかりバージンなんだもん。
なのに初めての相手が斗子さんて…
無理だよ?
僕は上半身を両手で隠しながら、そーつとパーテーションの後ろに隠れた。
「ぷっ、ぷぷぷ…、襲ったりしないから安心して? 私、ちゃんと恋人いるから(笑) 」
「そう…なんですか?」
「ええ、ちょっと気難しくて、無愛想な人なんだけどね、とっても優しい人なのよ?」
へえ…、そうなんだ?
「HIMEちゃんも良く知ってる人よ?」
え、僕…?
えっとぉ…、僕が知ってる人で、気難しくて無愛想な人って言ったら…
「え、ええっ? ま、まさか長瀬…さん?」
だって長瀬さん、今まで恋人とか…そんな話一度もしたことないし、僕はてっきり超ストレートのノンケだと思ってたのに、まさかまさかだよ…
「あ、でも智也には私が喋ったことは内緒よ?」
「え、何で?」
「あの性格だもの、分かるでしょ?」
確かに(笑)
別に怒ったりとかはしないんだろうけど、とにかく面倒臭いことになりそうだもんね。
「分かった、僕言わないよ。内緒にしとく」
「お願いね?」
「うん!」
…って返事はしたものの、正直自信ないんだけどね?
だってさ、実際長瀬さんのお顔見ちゃったらさ、絶対笑っちゃいそうなんだもん(笑)