第22章 日常10:僕、決めた!
「もしもし、智? どうだった? 話、ちゃんと着いたの?」
電話口に出た和の声は、相葉さんとは違って至って冷静だ。
それもそっか…
和には全部事情話してるもんね?
「うん。条件?みたいのは出されたけど、一応…ね」
「そっか、やっぱり出されたか…」
ある程度の予想はしてたんだろうね、和の声はやっぱり落ち着いてる。
「まあ、仕方ないよね、HIMEって言ったら、男の娘界では人気だし、事務所だってタダで辞めさせるわけないからね」
僕自身、そこまで人気があるって感じたことはないけど、長瀬さん曰く、実際DVDの売上はけっこうあるらしい。
「で、その条件てのは?」
「あ、うんとね、お股の毛を…じゃなくて…」
「はあ? ちょ、何言ってんの?」
だってしょうがないじゃん?
さっきから頭ん中、お股の毛を剃ることでいっぱいなんだもん…
「えと、けっこう過激なのに出なきゃなんないみたい…」
「過激って…、SMとか、そういうこと?」
「まあ…、そんな感じかな…」
ハッキリとSMと書かれてたわけじゃないけど、内容的にはそれに近い物があったような気がする。
「あ、でもね、ロウソク垂らしたり、ムチで打たれたりとか。そんなんではなかったと思う」
これからどんな風に変更されるか分かんないけど、僕が見た絵コンテには、そういった場面は一個も描かれてはいなかった。
「ふーん…、智の説明じゃなんだか良く分かんないけど、今までに経験した事ないようなシチュエーションであることは確かなのぬ?」
「うん」
それだけは断言出来る。
だって僕、今まで縛られたりとかは経験あるけど、そこまでハードなモノではなかったし、レイプ物だって出たことなかったもん。
「そっか…。まあ、相手の男優にもよると思うけど、過酷な撮影になることは間違いなさそうだね…」
「うん、そうみたい…」
長瀬さんも同じこと言ってたし…