第22章 日常10:僕、決めた!
両腕を組んだまま、「なるほどね〜♪」とニヤニヤ笑いを浮かべる和。
僕はと言えば、あまりの恥ずかしさに、穴があったら挿れたい…、じゃなくて入りたいくらいの気分で…
どんどん熱くなって行くお顔を、手でパタパタと扇いだ。
「まあでも、櫻井くんが正常なのも分かったし、男同士のセックスに対して偏見も無いみたいだし…」
「うん…」
「後は智がどうしたいか、ってことだけね?」
僕がどうしたいか…、か…
そりゃ櫻井くんと付き合えたら最高なんだけど、それにはまず僕自身が決断しなきゃいけないことがある。
僕はスッと息を吸い込むと、(僕なりに)顔を引き締め、丸まった背中をピンと伸ばした。
「僕ね、辞めようと思うんだ…」
「辞めるって…、何を…?」
和の片眉がピクリと上がる。
「だから…、AVのお仕事、辞めようかなって、思って…」
この先翔くんとの関係がどうなるかなんて、僕には分かんないけど、今のままAVのお仕事を続けていちゃいけない気がするんだ。
「長瀬さんには? 相談したの?」
「ううん、まだ…。なかなか言い出せなくて…」
ってゆーか、驚かないの?
僕がAVのお仕事辞めるって言ったら、和は当然のように驚くと思っていたんだけど…
「そっか…。良いんじゃないの?」
え、それだけ?
和が案外普通の顔してるから、ちょっぴり不安になってしまう。
「良いの? 僕、辞めちゃっても…」
「良いも悪いも、決めるのは智でしょ? 私がとやかく言うことじゃないわ…。ただ…」
そう言ったきり、難しいお顔で黙り込んでしまうから、僕の不安が更に大きくなる。
「ただ…、何?」
普段人を急かすことのない僕だけど、和が何を言おうとしているのか、気になって仕方がない。
「ねぇ、言って?」
僕は、組んだまま解こうとしない和の腕を掴んだ。
「ただ、何なの?」
すると和は漸く腕を解き、今度は僕の手を掴み直すと、ちょっぴり怖いお顔をして、
「良く聞いてね?」
って僕に言った。