第21章 日常9:耳を塞げば…

どうしてだろ…、手が震える。
ううん、震えるだけじゃなくて、指先がまるで血が通ってないみたいに冷たくなってる。

口の中だってカラカラだし…

あ、そっか…、聞きたくないんだ。

翔くんが何を言おうとしてるのか、僕には予想がつくから、聞きたくないんだ。

だから…

｢二人共AV男優ってことはさ、相葉さんにしろ和さんにしろ、他の奴を抱いたり、和さんに至っては抱かれたりもするわけでしょ？ 嫌じゃないのかな…ってさ…｣

この瞬間だけでもお耳塞ぎたかったのにな…

だって翔くんのお口から、そんな言葉聞きたくなかったんだもん。

｢それは…お仕事だから…｣

｢まあな…。でもさ、仕事だからって理由だけで、割り切れないこともあるだろ？｣

そりゃそう…だけどさ…
それを言い出したら、僕らみたいなお仕事してる人達、皆普通に恋愛なんて出来なくなっちゃうよ？

｢翔くんは…さ、HIMEのファン…なんでしょ？ もし、HIMEが翔くんと付き合いたいって言ったら？｣

どうするの？

大好きなHIMEが相手でも、同じように思うの？

｢HIMEともし…、そうゆー関係になったとしたら？｣

お仕事だと割り切れずに、HIMEのこと拒むの？

ねぇ、どうなの？

｢そうだな…、HIMEちゃんが特別とか思ってない…っつーか、そもそもHIMEちゃんとそういう関係は望んでないからさ…｣

え…？

｢そりゃさ、HIMEちゃんのことは好きだし、HIMEちゃんみたいな子とその…セックス？出来たら最高だとは思うけどさ、現実的に無理だろ？｣

そんなことない、無理なんかじゃないよ？

翔くんは気付いてないみたいだけど、僕が“HIME”なんだから…

｢仮に今、俺の目の前に裸のHIMEちゃんがいたとしても、多分俺は抱けないかな…｣

｢どうして？ HIMEだよ？ 大好きなんでしょ？｣

｢うん、好きだよ？｣

だったらどうして…