第21章 日常9:耳を塞げば…
なんとしてもDVDを見ようとする翔くんを説き伏せ、僕達は並んでベッドに横になった。
翔くんは超不機嫌なお顔してたけど、仕方ないじゃん?
だってHIMEマニアの翔くんですら入手が困難なDVDには、ほんの数分ではあるけど、HIMEになる前の…素の僕が映ってるんだもん。
勿論、お顔が映ってるわけじゃないよ?
でもそれは本編に限ってのことで、購入者のみが与えられる特典映像の中には、犯罪者並に目元だけを隠した僕のお顔がハッキリと、映像として残されている。
それにさ、その時着てた服とか…、今でも僕が着てる物ばっかなんだよ?
もっとも、翔くんが僕の着てる物まで興味があるかは分かんないし、HIMEマニアの翔くんのことだから、もう見ちゃってる可能性だってあるけど、ひょっとして…ってことだってあるじゃん?
それはさ、僕的にも困るってゆーかさ…
とにかく、今はまだってゆーか…、さっきは言いそびれちゃったけど、自分の口から告白するまでは、見られたくない。
僕は今度和に貸して貰うからと約束をして、どうにかその場をやり過ごした。
だから多分ホッとしたんだと思う。
先に聞こえてきた翔くんのイビキを聞いてたら、僕まで眠たくなっちゃって…(笑)
気付いた時には、僕はもうすっかり夢の中にいた。
うん、夢だと思ってたんだ。
やたらと甲高い…、そう例えるなら嬌声?みたいな声も、不規則な息遣いの合間に聞こえる低い呻きみたいな声も、それから…肌と肌がぶつかり合うような音も…
全部夢の中で聞こえてると思ってた。
でも違ったんだ…
普段は一度寝入ってしまったら滅多に目を覚ますことのない僕だけど、あまりに生々し過ぎる声と音に、パッと瞼を持ち上げた。
え、夢…じゃない…?
ってことはこの声って…
う、嘘でしょ…?
だってさ、だってさ、僕達が隣の部屋にいること知ってるはずじゃん?
なのに…、何してんの?