第20章 日常8:パーティー…とは?
悶々とした気持ちを抱えながらバイト時間をなんとかやり過ごし、櫻井くんと一緒に店を出る。
すると、階段を降りた先の道路に、見覚えのある車が止まっていて…
あの車って、まさか…違うよね?
わざわざ相葉さんが迎えに来てくれるなんて、そんなことあるわけ…
「お疲れ様、ヒ…じゃなくて、智」
あるのね…?
ってゆーか、今一瞬“HIME”って呼びそうになったでしょ?
「どうして相葉さんが…?」
運転席の窓から顔を出した相葉さんに言うと、相葉さんは夜なのに昼間の太陽ままたいな笑顔を僕に向け、車に乗るよう促した。
「え、でも…」
僕は一瞬櫻井くんの顔を振り返ると、櫻井くんは目を爛々と輝かせていて…
「櫻井…くん?」
僕が目の前で手をヒラヒラさせても、瞬き一つもしないで固まってしまっている。
あ、そっか…
HIMEの出演作品なら、タイトルは勿論のこと、監督さんの名前も共演者の名前までしっかり記憶している櫻井くんだから、当然相葉さんを知らないわけがないよね。
「えと、あのね、相葉さんは和の…」
恋人…って正直に言っちゃって良いのかどうか分からなくて、僕は相葉さんに救いを求めるように視線を送った。
すると、何かを察した相葉さんが手をポンと叩いて、
「あ、えと、実は俺達付き合ってさ…」
“ね?”とばかりに僕にウィンクを寄越した。
だから僕もつい、
「そ、そうなんだ、実は付き合ってて…だから…」
相葉さんに話を合わせるように頷いて見せた。
ん?
でもちょっと待って?
今の言い方だと、“僕と相葉さん”が付き合ってる、って聞こえない?
え、それ困る!
「あ、あのね、櫻井くん、違うの…」
僕は慌てて誤解を解こうとするけど、案の定激しく勘違いしてしまった櫻井くんは聞き入れてくれる様子もなくて…
「なんだ…、それならそうで言ってくれれば良いのに…」
僕の肩にポンと手を置くと、白い歯を見せて笑った。
うん、口元は…ね?
だって、目は全然笑ってないんだもん。