第18章 scene4:露天風呂
櫻井くんとのお喋りが楽しくて、僕は時間が過ぎるのも、自分がずっとスッポンポンのままだってことも忘れてしまって…
『いっけね、俺そろそろ出ないと遅刻する』
あ、そっか…
僕はお休みだけど、櫻井くんはバイトがあるんだっけ。
「ごめんね、なんか長話ししちゃって…」
って、殆ど櫻井くんが喋ってたんだけどね?(笑)
『いや、俺の方こそ忙しいのに悪かったね』
「ううん…、全然。電話、ありがと…」
ちょっぴり…すっごく驚いたけど、とっても嬉しかったよ。
『じゃあ…次は明後日だっけ、バイト』
「うん…」
『そっか。じゃあ…またな?』
「うん、また…ね?」
プツン…通話が途切れ、耳に宛てたスマホからは、プープーとなんとも虚しさを感じる音が聞こえた。
…って、こんなことしてる場合じゃない!
だって僕、スッポンポンじゃん?
それにウィッグも被ってなければ、メイクだってまだだし…
「急いで支度しなきゃ…」
僕はサラリと落ちて来る前髪をヘアバンドで上げ、一通りのベースメイクを済ませてから、ファンデーションを乗せ、シャドーやチークで目元や頬を飾って、それから淡いピンクのリップをひいて…
「ふふ、可愛い♡」
纏めた髪にウィッグを被ったら、あっという間にHIMEの出来上がり♪
「あとは浴衣か…」
撮影で使った浴衣は、僕に似合ってて可愛かったけど、色々汚れちゃって着れないし…
仕方ない、旅館のや浴衣でいっか…と!その前に下着つけなきゃ…
僕はリュックから新しい下着を取り出すと、全身が写る姿見の前で身に付けた。
ちゃんとチェックしとかないと、またチョロリンが一本…なんてことになっちゃうからね。(笑)
僕はアイボリーの下着を着けた上に、ちょっぴりゴワッとした旅館の浴衣を着ると、適当に帯を締めてからもう一度姿見に全身を写した。
「適当感半端ないけど…いっか♪」
また長瀬さんに直して貰えば良いしね?
僕はメイクポーチと、専用の鍵を手に部屋を出て、宴会場へと向かった。
『露天風呂』ー完ー