第17章 scene4:温泉宿
殺されるんだ…って、そう思ったら、自然と身体が震えた。
だから…かな…
ウィッグ越しにではあったけど、僕の頭に何かが触れた瞬間、
「ひぃ…………っ!」
僕は悲鳴を上げながら、両手で抱えたままの頭を激しく振った。
よくドラマとかであるじゃん?
ピストルとか頭に…ってシーンがさ…
僕はてっきりそう思ったんだけど、
「お前…何やってんだ?」
長瀬さんの思いっきり呆れた声に、ふと我に返り…
「だ、だって殺されるんでしょ?」
誘拐されて、んでもって身体も好き放題されてさ、最終的に口封じのために殺される…って、よくある話しじゃん?
「はあ? 前々から変わった奴だとは思ってたが…、お前大丈夫か?」
変わった奴…って、ちょっと酷くない?
ってゆーか…
「違う…の…?」
僕、殺されるわけじゃないの?
ゆっくり顔を上げた僕を見て、
「ぷっ、ぷぷぷ…(笑)」
お兄さんがお腹を抱えて笑った。
ってゆーか、そんなに笑う?
これでも僕、真剣だったんだからね?
「ごめんごめん(笑) はい、これ。俺は、カメラマン…って言うか、まだ見習いなんだけと、風間って言います。あ、“風間ポン”って呼んでくれて良いからね♪ 今日一日密着させて貰うので、よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げて差し出したお兄さんの手には、名刺が乗っけられていて…
「風間…俊介…?」
名前の横には、僕も知っている会社の名前がしっかり記載されていた。
「うん、そう、風間俊介。ちなみに、相葉ちゃんとは幼馴染ね」
そう…なんだ…?
良かったぁ…、相葉さんの幼馴染なら安心だ♪
僕はホッとすると同時に全身の力が抜けてしまって…
そうなると当然、“HIMEなんだから”って意識まで薄れちゃって…
つまり、気が緩んじゃったのね(笑)
僕は自分が超短いスカートを履いていることも忘れ、両足をパッカーンと開いた。
風間ポンのお膝の上に置いたカメラが、僕のお股に向けられているとも知らずに…