第14章 日常5:素顔の僕とお姉ちゃん(?)
「なんか、晩ご飯までご馳走になった上に、お風呂まで…、ありがとうございました」
最寄り駅まで…のつもりが、結局アパートのすぐ近くまで送って貰った僕は、車を降りるなり頭を深々と下げた。
そんな僕に相葉さんは、
「またいつでも遊びにおいでよ。HIMEちゃんなら俺も大歓迎だからさ」
夜目にも分かる白い歯をキランと光らせた。
勿論僕も、
「はい、是非♪」
満面の笑みで返すと、もう一度頭を下げてから、大袈裟過ぎるくらいに両手をブンブン振って、アパートへ続く路地へと入った。
錆びた階段を駆け上がり、ふと後ろを振り返ると、スポーツカーならではの爆音を響かせ、相葉さんの車が走り去るのが見えた。
僕はその場でもう一度両手を大きく振ると、見えっこないと分かっていながらも、ペコリと頭を下げてから、部屋の鍵を開けた。
一日留守にしていた部屋は、なんだか空気がムワ〜ンとしてて、僕は灯りをつけるよりも前に、窓を開け放った。
その時、ふとテーブルの上でチカチカと点滅する赤い光が視界に入って…
「そう言えば…」
HIME専用スマホさえあれば必要ないと思って、プライベート用のスマホは置いて行ったんだっけ…
僕は畳の上に胡座をかくと、テーブルの上のスマホを手に取った。
点滅してる…ってことは、誰かからメールでも来てんのかな?
僕はスマホの画面を指で一撫ですると、迷うことなくメッセージアプリを開いた。
すると…
「え、な、な、な、なんで…?」
表示された画面には、ズラーッと櫻井くんからのメッセージが並んでいて…
松本さんに着いて撮影の見学に行ったこと
生のHIMEを見たこと
生のHIMEと話をしたこと
生のHIMEの手を握ったこと
そして…
生でHIMEのイク姿を見て、超興奮したことが綴られていて…
僕は、和と相葉さんのおかげで軽くなった気持ちが、再びドヨーンと重たくなるのを感じた。
うぅ〜、櫻井くんに会いたいけど…、会いたくないよォ…
僕、どうしたら良いの?
『素顔の僕とお姉ちゃん(?)』ー完ー