第14章 日常5:素顔の僕とお姉ちゃん(?)
いつもよりも、ちょっとだけ早めにセットしたアラームに起こされ、僕はノロノロとベッドから抜け出す。
腰は…相変わらず痛いけど、どうやらお腹の方は大丈夫みたいだ。
僕は洗面所の鏡の前に立って、薄らと生えて来た髭を電気シェーバーで剃ると、その流れで突風に吹かれたみたく寝癖のついた髪を直した。
どうせキャップを被るんだから、そこまで気にしなくても良いんだけど、なんとなく…ね?
「あ、シャワーも浴びといた方が良いかな…」
…って、撮影でもないし、別にいっか…
僕は水で濡らした髪を手櫛で掻き上げると、鏡に映る自分の顔をジッと見つめた。
そこら辺にいる同年代の男の子達に比べれば、自分で言うのもなんだけど…、けっこう可愛い顔はしてると思うよ?
でもさ、僕レベルの人なんて、そこら中にいるし、もっと可愛い顔した人だっているもん。
その人達に比べたら、僕なんて平凡そのものなのに…
NINOはお互いすっぴんで…、なんて言ってたけど、本当に僕が“HIME”だって分かるのかな…
だって僕とHIMEとでは、こんなにもも違い過ぎるもん。
はあ…
先に相談持ちかけたのは…僕だけど、なんだか気が重いよ…
「はあ…」
僕は深い溜息を一つ落としてから、両手で顔をパンッと叩くと、せっかく綺麗に整えた髪を振り乱すように、頭をブンと振った。
着替えなきゃ…
部屋に戻った僕は、普段着が仕舞ってある引き出しを開けた…けど、
「何を着たら良いの?」
HIMEの時なら、迷うことなくフワフワで、レースもリボンもたっぷりの服を選ぶんだけど、“智”で…ってなると、正直困ってしまう。
だって僕が持ってる服といったら…
普段ジャケット代わりにしているあちこち擦り切れたデニムシャツに、ヨレヨレのTシャツと、くたびれたジーパンくらいのもんで、ろくな服がない。
仕方ないじゃん?
僕の日常っていったら、レンタルショップのバイトに行くか、HIMEになるかのどっちかなんだもん。
服なんて、HIME用の物以外には必要ないんだもん。